やっと、仮説検定に辿りつきました。ここが知りたくてこのサイトにきたという人も多いと思います。
ここを理解するには、平均、標準偏差、正規分布などの前提知識が必須ですので、まだ十分に理解されていない方は、もう一度おさらいしておくことをお勧めします。
仮説検定のイメージ
仮説検定と95%予想の関係は、表裏の関係と言えます。
あなたは今、舞台の上に立っていると想像してください。(図-1)
(図-1)
あなたは今から1000人を前にして芝居をします。一人芝居です。
芝居の幕が下りる時、拍手をしてくれる人の数は平均で700人、標準偏差は100人だということが経験上わかっているとします。
では、何人の人が拍手すると予言すれば、それは95%の確率で当たるでしょうか?
そう、500人~900人でしたね。
(この問いにすぐに答えられない人は正規分布の説明をもう一度しっかりと理解してください)
さて、ここで、視点を180度回転して、今度は観客席の視点でこの事象を見ていきましょう(図-2)。
(図-2) | |
ある舞台、これは何の舞台なのかはわかりませんが、その舞台で拍手している人の数を調べたら600人だったとします。
この600人という反応を見て、この舞台に立っているのは本当にあなただろうか?というのが仮説検定の考え方です。
もしも、それが本当にあなたの舞台だったとしましょう。だとしたら、95%の確率で500人~900人の人が拍手してくれるはずです。
今回の600人はその範囲に入っていますから、少なくともあなたの舞台”でない”と言うことはできません。かと言って、”である”と言い切ることもできません。だって、他の人の舞台かもしれないわけですから。
しかし、もしも拍手した人の数が910人だとしたらどうでしょう?
『今日はたまたまお客さんのノリが良かったんだろう。』
こう考えてしまいたい気持ちは分かりますが、こう考えてしまうと、920人なら有り得るのか?930人は?・・・となってキリがなくなってしまいます。
統計学では、客観的な確率を重視して、正規分布で言うところの”裾野”の5%でしか起こり得ないような事象が起きた場合は、『そもそも母集団に関する仮説が間違っていたのだ』という考え方を採用します。
すると、面白い結論が導かれます。
この場合、母集団を「舞台で演じているのはあなた」と仮定しましたが、仮説が正しいとすれば、結論が正しくない。結論が正しいとすれば、仮定が正しくないという矛盾が起こります。そして、統計学では仮定が妥当でないほうを選びます。つまり、舞台に立っているのは、あなたではない別の誰かだろう。と結論づけるのです。
妥当でないとして仮説を捨てることを「仮説を棄却する」と言います。
この仮説検定の考え方は非常に大事です。今回は正規分布の場合を説明しましたが、どのような分布であっても考え方は同じです。
さて、ここまでの説明で、仮説検定において、棄却する場合の根拠は5%という稀有にしか起こり得ないようなことは仮説そのものが間違っているのだろうという強い主張なのに対して、棄却しない場合は、棄却するには根拠が不十分だからという非常に弱い主張であることに注目してください。
そういう意味では、仮説検定というのは、正規分布の95%起こりうる予言の反対に、95%起こりえないことを予言するテクニックとも言えます。