標準的な形への整形
以上のことから、平均=n、標準偏差sのデータセットがあるとき、(x-n)/s の分布は、平均0、標準偏差1の分布になることが導かれます。
(x-n)/sというのは、意味的には平均からの乖離(偏差)が標準偏差幾つ分に該当するかと同等の意味です。
(x-n)/sが平均0、標準偏差1の分布をするということは、平均値からの乖離(偏差)は、標準偏差1つ分はごく普通にありえるということを意味し、今までの内容を指示することになります。
株の平均収益率
統計・確率というのは、時に発信側にとって都合よく解釈されるように、誤解を与える形で提供されることはよくあることです。
株の平均収益率というのも誤解しやすいものの一つです。
たとえば、年平均収益率が10%といういうと、どういう印象を受けるでしょうか?
銀行に預けていても1%未満の利子しかつかないご時世で10%の利子がつくとなると飛びつきたくなるかもしれません。
でも、それがこのようなものだと知っていたとしたらどうでしょう?
年度 | 収益率(%) |
---|---|
1 | 30 |
2 | 20 |
3 | -20 |
4 | 35 |
5 | -30 |
6 | -5 |
7 | 30 |
8 | 50 |
9 | -30 |
10 | 20 |
確かに平均すると10%ですが、収益率がマイナスの年があります。これでは運営途中で資金が枯渇する可能性もありますし、なによりそのまま株を保持し続けるのは心理的に難しいのではないでしょうか?
一方、次の例は平均収益率はさっきと同じですが、収益率が安定している例です。これなら、資金が枯渇する可能性は少なそうです。
年度 | 収益率(%) |
---|---|
1 | 5 |
2 | 10 |
3 | 10 |
4 | 15 |
5 | 7 |
6 | 2 |
7 | 18 |
8 | 10 |
9 | 10 |
10 | 13 |
このように、収益率が安定しているか否か、それを表すのが分散、あるいは標準偏差でした。つまり、株の収益率における標準偏差は、株のリスクを表す指針として利用できることが分かると思います。
この指標を株の世界では専門用語でボラティリティ(volatility、変動性)と呼んでいます。
シャープレシオ
なるほど、ボラティリティが高いほど、変動性が高くリスクが大きいことがわかりました。しかし、リスクが大きくても見返り、つまりリターンが大きければそれは妥当な投資だと言えるでしょう。別の言い方をすれば、リスクxリターンが同じならば、金融商品としては同じ品質だと考えるわけです。
ただし、金融商品の場合、ほとんどノーリスクと考えられる国債の利回りを上回る分をリターンとみなします。リスクに応じて国債を上回る利回りが得られると考えるのです。
シャープレシオ=(リターン - 国債の利回り) / ボラティリティ
問題
国債の利回りを3%とするとき、シャープレシオを基準として優秀な商品順に並べよ。
収益率(%) | ボラティリティ | |
---|---|---|
A | 5 | 3 |
B | 4 | 1 |
C | 10 | 8 |
回答
それぞれのシャープレシオは次のとおり
収益率(%) | ボラティリティ | シャープレシオ | |
---|---|---|---|
A | 5 | 3 | (5-3)/3 = 2/3 |
B | 4 | 1 | (4-3)/1 = 1/1 |
C | 9 | 7 | (9-3)/7 = 6/7 |
シャープレシオの大きい順に並びかえると、B、C、Aとなる。
リスクの分散
2つの金融商品を組み合わせることでリスクを軽減する方法について